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ゼロサムゲームとは?FXや経済に共通するゲーム概念をわかりやすく解説

作成日:2024年5月13日更新日:2024年6月7日
ゼロサムゲームとは?FXや経済に共通するゲーム概念をわかりやすく解説

ゼロサムゲームとは?

全体の合計がゼロになるゲーム

ゼロサムゲームとは、文字通り参加者全員の得点の合計がゼロになるようなゲームのことを指します。英語の「zero-sum」に由来するこの用語は、「ゼロ(zero)」と「合計(sum)」を組み合わせた言葉です。

一方が100点得点すれば、他方は必ず-100点を失点するように、プラスとマイナスが完全に相殺し合う状態をゼロサムと呼びます。つまり、ゲーム全体で見れば誰も得も損もしていない状況を指すのがゼロサムゲームなのです。

ゼロサムゲームの概念

ゼロサムゲームはゲーム理論の中でも重要な位置を占めており、経済学や経営学、社会学などさまざまな分野で応用されています。プレーヤーを政府や企業、個人に見立て、お互いがどのように行動を選択し、相手にどう影響を与えるかを分析する際に有効な手段となります。

数理モデルを使って現実世界の問題を解決するためのツールとしても活用されるゲーム理論において、ゼロサムゲームは競争的な状況を表す基本概念なのです。

ゼロサムゲームの具体例

1. 外国為替取引(FX)

外国為替取引は典型的なゼロサムゲームの一例です。為替レートの変動に応じて、ある通貨の価値が上がれば他の通貨の価値は下がる構造になっています。

例えば、1ドル=100円のときに100円で1ドルを購入できます。しかし、為替レートが変動して1ドル=110円になった場合、1ドルを手に入れるために110円を支払わなければなりません。つまり、ドル高になればドル買い参加者は得をし、円売り参加者は損をするのです。

このように、為替レートの変動によってゼロサムの原理が成り立つため、FXはゼロサムゲームの代表例と言えるでしょう。

2. 賭け事やギャンブル

身近な例では、賭け事やギャンブルもゼロサムゲームに当てはまります。例えば、3人で平等にお金を出し合って購入した3個のリンゴを、じゃんけんで勝った人が全て独り占めにするとします。

この場合、勝った人には3個のリンゴが渡り、残りの2人には0個ずつです。リンゴの総数は変わらず、勝者の得点と敗者の失点が相殺し合うので、ゼロサムゲームの条件を満たしているのがわかります。

ただし、賭け事の運営側が手数料を徴収する場合は、参加者全員の損得を合計すると必ずマイナスになるため、完全なゼロサムゲームとは言えません。

3. 伝統的な対戦型ゲーム

将棋や囲碁、チェスなどの伝統的な対戦型ゲームもゼロサムゲームの範疇に入ります。これらのゲームでは、一方のプレーヤーが勝利すれば、その分を他方が敗北として失点することになります。

例えば将棋では、自分の持ち駒が増えれば相手の持ち駒は減るため、双方の駒の合計数は常に一定です。つまり、一方の得点は必ず他方の失点になるので、ゼロサムの関係が成り立つのです。

対戦ゲームにおいてゼロサムが成立するのは、一方が勝利すれば他方が敗北するという性質によるものです。このように、ゲームの性質自体がゼロサムを作り出しているケースが多いのです。

4. 企業におけるゼロサムゲームの例

ビジネスにおけるゼロサムゲームの例として、例えば、同業の競合他社から顧客を獲得したとき、新たな顧客獲得によってその企業は増収する一方で、顧客を失った他の企業は収入が減少します。このような場合、市場全体の収益は変わらず、単に利益が再分配される形になります。ここで重要なのは、顧客獲得した企業が何の革新も付加価値も提供していない場合、この顧客の移動は純粋なゼロサムゲームと見なされることです。

この現象は、企業が新たな価値を生み出さずに単に既存の市場シェアを奪い合う状況を作り出します。このような競争は、短期的には一部の企業に利益をもたらすかもしれませんが、長期的には業界全体の革新と成長を妨げる可能性があるため、注意が必要です。

非ゼロサムゲームとは

一方、ゼロサムゲームに対して「非ゼロサムゲーム」という概念も存在します。非ゼロサムゲームとは、参加者の得点の合計がゼロにならず、プラスまたはマイナスになるゲームを指します。

1. 株式投資が代表例

株式投資は典型的な非ゼロサムゲームの例です。株価が上昇すれば投資家全員が利益を得られますし、下落すれば全員が損失を被ることになります。つまり、利益と損失が同時に発生するわけではありません。

投資を通じて新しい付加価値が生み出されるため、投資家同士で得失を完全に相殺し合うゼロサムの状態には陥りません。このように、株式投資は参加者全員の利害が一致する非ゼロサムゲームなのです。

2. 賞金付き大会や合同事業も該当

他にも、賞金付きの大会やコンテスト、合同事業なども非ゼロサムゲームに当てはまります。参加者同士で直接的に得失を争うのではなく、主催者側から一定の利益が出る構造になっているためです。

また、Win-Winの関係と呼ばれる協調的な取り組みも、非ゼロサムゲームの一種です。お互いが協力し合うことで得られる利益は、参加者全員で享受できるためです。

非ゼロサムゲームでは、一方が得をしても他方が必ずしも損をするわけではありません。そのため、ゼロサムゲームよりも多くの付加価値を生み出せる可能性があります。

プラスサムゲームとマイナスサムゲーム

非ゼロサムゲームには、さらに「プラスサムゲーム」と「マイナスサムゲーム」の2種類があります。

プラスサムゲームとは

プラスサムゲームとは、参加者全員の得点の合計がプラスになるゲームのことです。一方が得をしても、他方が必ずしも損をするわけではありません。むしろ、お互いに協力し合うことで全体の利益が増えていく関係にあります。

プラスサムゲームの例としては、Win-Winの取り組みに加えて、企業の成長による株式投資の利益や、国が主導する消費活性化キャンペーンなどが挙げられます。参加者全員にとってプラスの付加価値が生み出される点が特徴です。

マイナスサムゲームとは

一方のマイナスサムゲームは、参加者全員の得点の合計がマイナスになるゲームを指します。つまり、誰かが得をしても、結果として全体でマイナスの損失が出る構造です。

代表例としては、運営側が一定の収益を得る賭け事やギャンブル、また宝くじなどがあげられます。参加者全員の出資金の合計よりも、配られる賞金の額が少なくなっています。そのため、参加者全員で見れば必ずマイナスの損失が出るのです。

このように、マイナスサムゲームは参加者全員にとって望ましくない側面があります。しかし一方で、参加者が楽しみを得たり、主催者側に一定の収益があがるというメリットもあるため、一概に否定されるわけではありません。

ゼロサム思考とは

ゼロサムゲームに関連する重要な概念に「ゼロサム思考」があります。ゼロサム思考とは、物事を白黒はっきりさせようとする二元論的な考え方を指します。

一方が得をすれば他方が損をする発想

ゼロサム思考では、一方が利益を得ればその分を他方が失うと考えられています。つまり、自分が得をするためには誰かが損をしなければならないという発想です。

例えば、「自分の評価が上がれば、同僚の評価は下がるはずだ」と考えるのがゼロサム思考の典型例です。同じ条件や機会が誰にでも均等に与えられているわけではないと過剰に不安を抱くのも、ゼロサム思考が働いている現れです。

認知バイアスの一種

ゼロサム思考は、人間が持つ認知バイアス(思い込み)の一種とされています。自分の経験則や価値観、先入観から物事を見る癖があり、ゼロサムでない選択肢を見落とすことにつながります。

つまり、ゼロサムでない可能性を考慮できないため、物事を二元論的に捉えがちになってしまうのです。この認知バイアスが、対立を生み出す大きな要因になっていると考えられています。

ビジネスシーンでの影響

ゼロサム思考は、ビジネスの現場でさまざまな問題を引き起こす可能性があります。例えば、部門間の対立が生じたり、新規事業への投資を控えめにしてしまったりする可能性があります。

また、情報の非共有や、同僚を敵視するような風潮が生まれかねません。社内の人間関係が悪化すれば、生産性の低下やモチベーションの低下につながる恐れもあります。

長期的な視点に立てば、ゼロサム思考はビジネスの発展を阻害する要因になりかねません。そのため、ゼロサム思考から脱却し、Win-Winを目指す発想へとシフトすることが重要です。

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