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ハーモニックパターンを使った高勝率トレード手法
目次
ハーモニックパターンの基本原理
ハーモニックパターンとは、フィボナッチ比率を利用して相場の反転ポイントを予測するテクニカル分析手法です。
具体的には、ハーモニックパターンはレートの上昇と下落の波動がフィボナッチ比率に従って進行することを前提としています。フィボナッチ数列は0、1、1、2、3、5、8、13…と続く数列で、隣り合う2つの数の比をとると1.618に収束します。この比率は自然界に存在する黄金比と呼ばれ、様々な分野で活用されています。
ハーモニックパターンでは、レートの反発・反落がフィボナッチ・リトレースメント(23.6%、38.2%、50%、61.8%)やフィボナッチ・エクステンション(127.2%、161.8%など)の特定の比率で発生すると想定されます。つまり、過去の価格動向から将来の反転ポイントを予測できるわけです。
フィボナッチ理論の応用
フィボナッチ理論は、テクニカル分析の有力な手段として長年にわたり活用されてきました。移動平均線の設定期間にフィボナッチ数を使うことや、サポート・レジスタンスラインを引く際のガイドラインとしてフィボナッチ・リトレースメントを参照するなど、その応用は多岐にわたります。
ハーモニックパターンはこのフィボナッチ理論をさらに発展させ、チャート上に現れる特定のパターンに着目しています。価格が一定の法則性を持ってフィボナッチ比率に従う傾向があることを利用し、反転シグナルを捉えようとするアプローチなのです。
ハーモニックパターンの基本形4種類
ハーモニックパターンには、4つの基本形が知られています。それぞれのパターンは、発見者の名前や関連する事物にちなんで命名されており、ユニークな呼び名が特徴的です。
ガートレー(Gartley)
ハーモニックパターンの代表格と言えるガートレーは、H.M.ガートレー氏によって1930年代に発見されました。Mの形やWの形をしたこのパターンは、反発や反落の可能性が高まるシグナルとされています。
ガートレーが成立する条件は以下の通りです。
- B地点: X→Aの上昇に対する61.8%リトレースメント
- C地点: A→Bの下落に対する38.2%~88.6%リトレースメント
- D地点: X→Aの上昇に対する78.6%リトレースメント
- D地点: A→Bの下落に対する127%~161.8%エクステンション
実際のトレードでは、これらの比率を完全に満たす必要はありません。ある程度の許容範囲内であれば、ガートレーの形状が現れたと判断できます。
バット(Bat)
バットは、コウモリの翼を広げた形状に似ていることから名付けられました。2001年にScott M. Carney氏によって発見されたこのパターンでは、以下の条件を満たす必要があります。
- B地点: X→Aの上昇に対する38.2%~50%リトレースメント
- C地点: A→Bの下落に対する38.2%~88.6%リトレースメント
- D地点: X→Aの上昇に対する88.6%リトレースメント
- D地点: A→Bの下落に対する161.8%~261.8%エクステンション
ガートレーと同様に、D地点を潜在的な反転ゾーン(PRZ)と捉え、その付近でエントリーを検討します。
バタフライ(Butterfly)
バタフライは、ガートレーの延長線上にあるパターンです。D地点がX地点を大きく超えた場合、つまりX→Aの上昇に対する反落が127%~161.8%、さらには261.8%に達した場合にバタフライが形成されます。
このパターンが成立するためには、以下の条件を満たす必要があります。
- B地点: X→Aの上昇に対する78.6%リトレースメント
- C地点: A→Bの下落に対する38.2%~88.6%リトレースメント
- D地点: X→Aの上昇に対する127%~161.8%リトレースメント
- D地点: A→Bの下落に対する161.8%~224%エクステンション
クラブ(Crab)
クラブは、バタフライよりもさらに押し目が深くなるパターンです。カニにちなんで名付けられたこのパターンが形成されるのは、以下の条件を満たした場合です。
- B地点: X→Aの上昇に対する38.2%~61.8%リトレースメント
- C地点: A→Bの下落に対する38.2%~88.6%リトレースメント
- D地点: X→Aの上昇に対する161.8%リトレースメント
- D地点: A→Bの下落に対する224%~361.8%エクステンション
クラブでは、D地点がX地点を大きく下回る可能性があり、そこからの反発は強くなる傾向にあります。
ハーモニックパターンの派生形6種類
基本形に加えて、ハーモニックパターンには様々な派生形が存在します。これらは近年になって発見されたものが多く、今後も新たなパターンが加わる可能性があります。代表的な派生形を6つ紹介します。
オルトバット(Alternate Bat)
オルトバットは、バットよりも浅いB地点の押し目が特徴的です。このパターンが成立するには、以下の条件を満たす必要があります。
- B地点: X→Aの上昇に対する38.2%リトレースメント
- C地点: A→Bの下落に対する38.2%~88.6%リトレースメント
- D地点: X→Aの上昇に対する113%リトレースメント
- D地点: A→Bの下落に対する200%~361.8%エクステンション
ディープクラブ(Deep Crab)
ディープクラブは、クラブよりも深い押し目が発生するパターンです。成立条件は以下の通りです。
- B地点: X→Aの上昇に対する88.6%リトレースメント
- C地点: A→Bの下落に対する38.2%~88.6%リトレースメント
- D地点: X→Aの上昇に対する161.8%リトレースメント
- D地点: A→Bの下落に対する200%~361.8%エクステンション
サイファー(Cypher)
サイファーは、発見者が特定されていない比較的新しいパターンです。このパターンが形成されるのは、以下の条件を満たした場合です。
- B地点: X→Aの上昇に対する38%~61%リトレースメント
- C地点: X→A→Bのフィボナッチエクスパンションが127%~141%
- D地点: X→Cの下落に対する78%リトレースメント
シャーク(Shark)
シャークは、2011年にScott M. Carney氏によって発見されたユニークなパターンです。フィボナッチ比率に加えて、エリオット波動の概念も取り入れられています。
- B地点: X→Aの上昇に対する113%~161.8%リトレースメント
- C地点: O→Xの下落に対する88.6%~113%リトレースメント
- C地点: A→Bの下落に対する161.8%~224%リトレースメント
シャークの特徴は、C地点をPRZ(Potential Reversal Zone:潜在的な反転ゾーン)と定義している点にあります。
スリードライブ(Three Drives)
スリードライブは、Robert Prechter氏の著書「Elliot Wave Principle」で紹介されたパターンです。以下の条件を満たす必要があります。
- A地点: O→Aの上昇に対する61.8%リトレースメント
- B地点: A→2の下落に対する61.8%リトレースメント
- 2地点: O→1→Aのフィボナッチエクスパンションが127.2%~161.8%
- 3地点: A→2→Bのフィボナッチエクスパンションが127.2%~161.8%
5-0
5-0は、Scott M. Carney氏によって発見された新種のパターンです。以下の厳しい条件を満たす必要があります。
- B地点: 0→X→Aのフィボナッチエクスパンションが113%~161.8%
- C地点: X→A→Bのフィボナッチエクスパンションが161.8%~224%
- D地点: B→Cの下落に対する50%リトレースメント
- AB=CD
このように、ハーモニックパターンには様々な種類が存在します。新しいパターンが次々と発見されていることからも、その魅力と可能性が窺えます。
ハーモニックパターンの実践的な活用方法
ここまでハーモニックパターンの基礎を解説してきましたが、実際のトレードではどのように活用すればよいのでしょうか。ここからは、FXを例に具体的な手法を紹介します。
1. 長期トレンドに合わせた短期足の逆張り
ハーモニックパターンは、長期トレンドの流れに逆らわない範囲で短期足の逆張りに適しています。つまり、日足や週足などの長期チャートで方向性を確認し、そのトレンドに沿って1時間足や15分足などの短期足でエントリーを狙うという手法です。
例えば、日足チャートで下降トレンドが続いている場合、1時間足でガートレーのブリッシュ(買い)パターンが形成されても、そのまま買い入れるのは避けましょう。代わりに、ガートレーのD地点で一旦売りを入れ、反発を確認してから買い建てを行うようにします。
このように、長期トレンドの流れを尊重し つつ、短期的な逆張りのチャンスを狙うことが重要です。ただし、トレンドの転換期にエントリーしてしまうと、想定外の損失が発生する可能性があります。そのため、長期トレンドが確立する前の局面や、明確なトレンドが見られない範囲でのみハーモニックパターンを適用するのが無難でしょう。
マルチタイムフレーム分析を徹底し、長期足と短期足の両方でトレンド方向を確認することで、ダマシのリスクを最小限に抑えられます。具体的には、デイトレードを行う場合は月足や週足で大まかな相場の動きを把握し、日足や4時間足でレンジやトレンドを特定した上で、1時間足や15分足にハーモニックパターンが出現するのを待ちます。
2. 逆張りインジケーターとの併用
ハーモニックパターンだけでは不十分な場合があるため、他の逆張りインジケーターと組み合わせて使うことをおすすめします。代表的なものとして、ストキャスティクスやRSI、RCIなどのオシレーター系指標が挙げられます。
これらの指標で買われすぎや売られすぎの領域に達した後に、ハーモニックパターンのD地点がくれば、エントリーのタイミングとなります。指標の売買シグナルとハーモニックパターンが重なることで、逆張りのエントリーポイントをより確かなものにできるのです。
ただし、このアプローチを採用すると、トレードチャンスが減少する可能性があります。収益性とリスク許容度を勘案しながら、エントリー条件を調整する必要があります。
3. 順張りインジケーターとの併用
逆張りインジケーターに加えて、順張りインジケーターとハーモニックパターンを組み合わせる手法も有効です。移動平均線やボリンジャーバンドなどのトレンド系指標を活用し、長期トレンドの方向性を確認します。
その上で、短期足でハーモニックパターンが形成された際、D地点がトレンド方向と一致していればエントリーのチャンスと判断できます。例えば日足が上昇トレンドにあり、4時間足がレンジ相場の場合、1時間足でブリッシュ・ガートレーのD地点を待ち構えます。
このアプローチでは、長期トレンドに沿った方向でのエントリーになるため、ダマシのリスクが低減されます。ただし、長期的なトレンドが続く間はトレードチャンスが限られてしまう点には留意が必要です。
裁量的アプローチの重要性
ハーモニックパターンを機械的に適用するだけでは不十分で、状況に応じた柔軟な対応が求められます。D地点の位置が理論値からずれている場合でも、ローソク足の形状やボリュームなどの情報から反転の可能性を読み取る必要があります。
つまり、ハーモニックパターンはあくまでガイドラインに過ぎず、最終的にはトレーダー自身の経験と勘に基づいた判断が重要になります。理論と実際のチャートパターンを照らし合わせながら、エントリーのタイミングを見極める力が問われるのです。
このように、ハーモニックパターンを単独で使うよりも、他の分析手法と組み合わせて総合的に判断することが賢明です。マルチタイムフレーム分析やインジケーターの活用、さらには経験に裏打ちされた勘を働かせることで、より確度の高いエントリーを狙えるはずです。
ハーモニックパターンを実践する上での注意点
ハーモニックパターンは魅力的な手法ですが、一定のリスクが伴うことも事実です。実践に移す前に、以下の注意点を確認しましょう。
1. D地点での反発を過信しない
ハーモニックパターンの最大の特徴は、D地点での反転を予測できる点にあります。しかし、この反転が必ずしも発生するわけではありません。D地点を越えて、さらに押し目が入る可能性も十分にあります。
そのため、D地点が出現したからといって、無闇にエントリーするのは避けましょう。一定の価格帯(PRZ)を設定し、その範囲内でレートが反転する兆候を確認してからエントリーを検討する方が賢明です。
また、D地点を待たずにエントリーする場合は、資金の一部を確保して分割エントリーを行うなど、リスク管理に万全を期す必要があります。
2. 長期トレンドに逆行しない
ハーモニックパターンは短期的な逆張りに適していますが、長期トレンドに逆行するようなエントリーは避けるべきです。長期トレンドの力は非常に強力で、短期的な逆張りで勝つのは難しいからです。
例えば日足が強い上昇トレンドにあるにもかかわらず、1時間足で売りエントリーを試みるのは賢明とは言えません。たとえハーモニックパターンが形成されていても、長期トレンドに逆らうリスクを冒してまで売りに走る必要はありません。
このようなケースでは、エントリーを見送るか、長期トレンド転換の可能性が出てきてから売りを検討するなど、慎重な判断が求められます。
3. 損切りルールの厳守
ハーモニックパターンを使ったトレードでは、損切りルールを必ず設定する必要があります。これは、長期トレンドの転換期にエントリーしてしまった際に、大きな損失を防ぐための対策です。
具体的な損切りルールとしては、X地点を下回った(上回った)時点で、ポジションを全て切ることが一般的です。X地点を割り込むことで、ハーモニックパターンの成立条件が完全に失われてしまうためです。
損切りラインは、トレード開始時に設定しておき、一定の利益が出た段階で順次引き上げていく方法が賢明です。感情的な判断に惑わされずに、機械的に損切りルールを適用することが肝心です。
4. 派生形の勝率低下に注意
ハーモニックパターンには、基本形の4種類に加えて様々な派生形が存在します。しかし、これらの派生形になるほど、勝率が低下する傾向にあります。
その理由は、基本形ほど多くのトレーダーに認知されておらず、「多数決の力」が働きにくいためです。移動平均線などの主要な指標ほど、利用者が多いため売買シグナルが機能しやすくなります。
そのため、派生形のハーモニックパターンを使う際は、より慎重な判断が求められます。他の指標と組み合わせるなどして、エントリーの確度を高める工夫が必要不可欠といえるでしょう。
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